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Signals #09 ニーナ・ルシエール

Constellation of dragon (detail) 2020, photogram ©Nina Roussière

ニーナ・ルシエール
私が辿るしるしと、この意図が私に伝えることと、私が書いて伝えること、そして書を定義するもの、それらの間の相互作用。
直感と作法の間にあるもの、制約的な慣習による説明的描写の作法から逃れる技術、変位のプロセス、そしてデジタルの技術の拡張による解釈。
これらは、感情と、ドローイングをする手を含んでいる。
私にとってドローイングは感覚的な体験であり、それは崩れた言語の前ぶれのようなものだ。
私は生命線を、小道を、可能性を描く。
私は、時間というものがもはや存在せず、私の描く線が潜在的な未来をたどる場所に身を置く。そこには陽性に帯電した振動があり、しるしそのものの中に、形作る力がある。
そしてそこには、優雅さ、宇宙と楽譜の間の境界線の音楽、音符とストロークの星座があり、これからやって来る何かが注がれている。変革と一人一人の関係。
私は純粋な身振りや、飾り気のない線で、シンプルに、経験と直感による真実を求める。これは物質と線の魂を消してしまうようなコンピュータ計算では生成できない!
人工知能は私に制約を与えるはずで、それはある言語として、単に新しいパラメーターとして搭載された情報の伝達方法だ!
絵画やドローイングの道具は、明白なストロークの痕跡に感応する。
ドローイングが始まって以降の身振りの記憶は、人類の歴史と絡みあっている。ドローイングのリアリティーの中には、何が刻まれているか(パリンプセスト=羊皮紙などの上にすでに書かれていた文字を消して新しく書かれた古文書)の痕跡が常にあり、一度刻まれてしまったらごまかせないし、コマンドZでやり直しもできない。
私たちのフィジカルな現実には、常に痕跡がある。それは私たちに過去を目撃させたり、未来の現実を告げる。

Nina Roussière
フランスのセットを拠点に活動する。これまで南仏オクシタニア地方では2014年RMCA(セリニャン)、2015年MOCO Panacée(モンペリエ)、2018年FRAC(モンペリエ)や、2018年D0C(パリ)などで数多くのグループ展に参加している。
ニーナ・ルシエールは、知能システムを観察し、伝統的な図像制作だけでなく写真やインスタレーションといった広義のドローイングを介して、手動による転写を試みている。古代のツールを使用するなど、ドローイングや写真の起源へと立ち返りながら、技術と伝統を行き来する。
ドローイングは彼女にとって、あらゆる差異が全体を構成するような言語を書く方法である。
Instagram: @ninaroussiere

現在、モンペリエのギャラリーchantiers BoîteNoireにて個展”Les traces du futur(未来の痕跡たち)”を開催中。
https://www.leschantiersboitenoire.com/

Blurry future 2020 intissed textile, rise paper, graphite, charcoal ©Nina Roussière
When the wind blows in the distance of waves.. (detail) 2020 fiberglass, acrylic, brass tube ©Nina Roussière

鈴木ヒラク/アーティスト。1978年生まれ。東京芸術大学大学院美術研究科修了後、シドニー、サンパウロ、ロンドン、ニューヨーク、ベルリンなどの各地で滞在制作を行う。ドローイングを核として、平面/インスタレーション/彫刻/パフォーマンス/映像など多岐に渡る制作を展開。著書に『GENGA』などがある。現在、東京芸術大学大学院美術研究科非常勤講師。