「静かな解体の音が聞こえる」というのは、私がロンドンからコロナの影響で東京に戻っ てきた時に浮かんできた言葉だ。その後2週間の自宅隔離期間にその音の出力先を探るよ うに南極の衛星写真を眺めるようになる。それからしばらくして、商店街の舗道に落ちて いたドライアイスの異様な存在感に釘付けになった。
変わりゆく地球環境の不可逆性。肥大化した権力やコミュニティが、氷をウイスキーにつ けた時にならすパチパチという音とともに溶け出していく予感。絶え間ない SNS の世 界。切断され、また繋がってゆくこと。それらの一連の感覚について身体で確かめるよう に、氷を紙の上で溶かし「氷の痕跡」を作り始めた。ゆっくりと溶けていく自作の氷を眺 めながら、観察者なく溶けていく南極の氷に思いを馳せる。
身体で確かめたいという動機に矛盾して、紙の上で氷を溶かすというプロセスの中で私は そこに介入できない。待つことしかできないもどかしさだけでなく、コントロールのでき ないアウトプットに対して畏敬の念すら感じた。しかしその感情自体が宇宙の壮大さを物 語り、簡単にコントロールすることのできないこの世界に呼応しているようにも思う。
藤瀬朱里
東京出身。慶應義塾大学環境情報学部 ( 認知科学専攻 ) 卒業 , Camberwell collage of Arts (ファンデーション コース、ドローイング&コンセプチュアルアートプラクティス専攻)卒 業。ドローイングを軸に、生活の中に偏在する様々な痕跡を刺繍など身体的な動作を用い てトレースする作品を主に制作している。トレースという通常の認知バイアスのある状態 とは異なるプロセスでそれらが持つ独特な静けさを理解し引き出そうとしている。
website : https://akari.studio/
instagram : @akari_artwork
「静かな解体の音が聞こえる」というのは、私がロンドンからコロナの影響で東京に戻っ てきた時に浮かんできた言葉だ。その後2週間の自宅隔離期間にその音の出力先を探るよ うに南極の衛星写真を眺めるようになる。それからしばらくして、商店街の舗道に落ちて いたドライアイスの異様な存在感に釘付けになった。
変わりゆく地球環境の不可逆性。肥大化した権力やコミュニティが、氷をウイスキーにつ けた時にならすパチパチという音とともに溶け出していく予感。絶え間ない SNS の世 界。切断され、また繋がってゆくこと。それらの一連の感覚について身体で確かめるよう に、氷を紙の上で溶かし「氷の痕跡」を作り始めた。ゆっくりと溶けていく自作の氷を眺 めながら、観察者なく溶けていく南極の氷に思いを馳せる。
身体で確かめたいという動機に矛盾して、紙の上で氷を溶かすというプロセスの中で私は そこに介入できない。待つことしかできないもどかしさだけでなく、コントロールのでき ないアウトプットに対して畏敬の念すら感じた。しかしその感情自体が宇宙の壮大さを物 語り、簡単にコントロールすることのできないこの世界に呼応しているようにも思う。
藤瀬朱里
東京出身。慶應義塾大学環境情報学部 ( 認知科学専攻 ) 卒業 , Camberwell collage of Arts (ファンデーション コース、ドローイング&コンセプチュアルアートプラクティス専攻)卒 業。ドローイングを軸に、生活の中に偏在する様々な痕跡を刺繍など身体的な動作を用い てトレースする作品を主に制作している。トレースという通常の認知バイアスのある状態 とは異なるプロセスでそれらが持つ独特な静けさを理解し引き出そうとしている。
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