Artwork+Text Essay Wall Posts Signals

Signals#23 ロドリゴ・ガルシア・ドゥトラ

In Fieri, 2021, digital drawing, printed on paper 30 x 42 cm/ printed on textile 130 x 197 cm © Rodrigo Garcia Dutra

私は、閉じ込められた中で、いかに自由にアクセスできるか思案していた。体験できるのは仮想の自由でしかなかった。私たちと、外の世界とのあらゆる相互作用の絶え間ないデジタル化。私はここから脱却したいと思った。

最近のリオデジャネイロのビーチは、社会的距離を増やすべく、恒常的な制限をするための公的な査察が行われるようになった。そして、海はスポーツの練習以外のアクセスが禁止された。

私が住んでいる場所の近くには砂丘のようなビーチがあるのだが、そこはまったく査察の対象ではないように思えた。だから他に人がいても不思議ではなかった。私はこの環境に感謝しているし、砂にドローイングをして、その痕跡が海に消されることは、仏陀が色とりどりの砂で曼荼羅を作ってはそれを解体して、宇宙の創造と破壊の絶え間ないメタファーとしていることと、何かとても関係があると思った。

私はまた、2019年から、新しい言語への言及としてのシンボルを制作している。それは例えば映画「2001年宇宙の旅」と「メッセージ」の間と深い関係があると言える。私は人類の進化について、言語の進化はいかに言葉のないコミュニケーションへと移行するのかについて考えている。私たちは言葉の代わりに、さまざまな概念を含むシンボルを持ちうるのではないだろうか。

月や惑星のかたちも、原始時代から私たちとともに進化してきた。私たちが空を見ると、太陽や月といった球体が見える。偶然にもそれらは同じ大きさに見えるが、それは実際の大きさに対して距離が異なるからだ。私たちはずっと昔から、お互いの目を見つめ合ってきた。言葉だけではなく、あの球体たちを通したコミュニケーションの方法で、私たちは何かを語り合ってきたのである。


ロドリゴ・ガルシア・ドゥトラ

1981年、ブラジル・リオデジャネイロ生まれ。2009年に英国ロンドンのセントラル・セント・マーチンズLismore Castle 奨学金を受けて美術修士号を取得し、2014年に英国ロンドンのロイヤル・カレッジ・オブ・アートで彫刻修士号を取得した。彼の制作活動は、今日私たちが認識している世界の美学に影響を与えた瞬間を振り返るものである。実際に起きた事実、ファウンドオブジェ、贈り物、旅行した場所などの集積を構築し、これらの要素を再加工して新たな光を投じることで、ある瞬間や状況を痕跡として提示することを試行している。

instagram : @rodrigogarciadutra

© Rodrigo Garcia Dutra
© Rodrigo Garcia Dutra

鈴木ヒラク/アーティスト。1978年生まれ。東京芸術大学大学院美術研究科修了後、シドニー、サンパウロ、ロンドン、ニューヨーク、ベルリンなどの各地で滞在制作を行う。ドローイングを核として、平面/インスタレーション/彫刻/パフォーマンス/映像など多岐に渡る制作を展開。著書に『GENGA』などがある。現在、東京芸術大学大学院美術研究科非常勤講師。