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Signals #01 中原一樹

“ernst(深刻)”とドイツのメルケル首相は3月18日の演説の冒頭でそう始めた後、互いに「思い遣り」をもつことを国民の立場に言及しながら伝えた。グリュッタース文化大臣は「文化、芸術の力が必要。」と公言した後、自由業者やアーティストに緊急パッケージと称した助成を実現させた。その翌日は晴天だった。いつもの様に家族3人で近所のスーパー(Netto)で買い物を済ませた帰り道、双子と一人の子を持つ家族が外で日向ぼっこをしていた。夫のクリスの表情が何とも明るく、妻でダンサーのリザは5階のベランダから勢いよく手を振ってきた。互いを思い遣ること、やさしさ、これから少しづつその意義を自分で見出していきたい。写真は、ベルリンでロックダウンが決まった後に書いた僕の「無一物」と妻の「リンゴの樹」。2020年4月10日

中原一樹/アーティスト。1980年香川県生まれ。ベルリンを拠点に制作活動を続けている。2010年、ベルリン・ヴァイセンゼー美術大学修了、2011年に同大学にてマイスターシューラー取得。2013年、公益財団法人ポーラ美術振興財団在外研修制度によりロンドンで滞在制作。2017年、優れたドローイング、版画作家に贈られるクリスチーネ・ペルゼン賞をベルリニッシェ・ギャラリーより受賞。