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Signals#29 安部典子

The first cut, 2021, cut on synthetic paper (work in progress) © Noriko Ambe

「カラッポの自分」という視点に気付いてから、1999年より、線を引き丸を描き、紙を一枚一枚カットして積み上げる行為を続けている。歪みながら現れる形に、個の感情の機微や癖、そのバイオリズムに耳を澄ます。作品はすべてフリーハンドになった。
私にとって(カットされた)線とは、ネガとポジを分かち、個という部分と自然の一部としての人間、さらに我々を取り巻く自然界とを繋ぐ、いわば静かに統率する宇宙の秩序を、自分の中に写し取るメディウムのようなものである。

バランス、秩序、純度が独自の世界を形成する。影としての物質と、私という精神的な領域、これらの主体の他者性と向き合う。
コロナ禍というエネルギー体の変換期に生きる今、いわば、”アーティフィシャル(人工物)”であるアートを通して、自然(ネイチャー)から自然(ピュシス)という哲学的変換に立ち会い、その表現としての、真実の経験を探っていきたいと思っている。

安部典子

1999年より「線を引く/カットする行為」というプロジェクトを開始。無数の円や線の重なりあうドローイング、また何百枚、何千枚という紙を一枚ずつフリーハンドで切り重ねることにより、オリジナルな地形を作り出す。時間と自然と人間のシンクロニシティの具現化を試みる。
2018年より”Parallel World”という有機的な形と、幾何学的図形を組み合わせた新しい一連の制作を開始。抽象表現としての純粋なる秩序を試みている。

website : http://www.norikoambe.com/
instagram : @ambenoriko

それは書かれていた, 2020, Cut on synthetic paper, glue © Noriko Ambe
White into black, 2018, Cut on paper, glue © Noriko Ambe

鈴木ヒラク/アーティスト。1978年生まれ。東京芸術大学大学院美術研究科修了後、シドニー、サンパウロ、ロンドン、ニューヨーク、ベルリンなどの各地で滞在制作を行う。ドローイングを核として、平面/インスタレーション/彫刻/パフォーマンス/映像など多岐に渡る制作を展開。著書に『GENGA』などがある。現在、東京芸術大学大学院美術研究科非常勤講師。