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Signals#26 モニカ・グルツィマラ

©Monika Grzymala, Suminagashi, Studio, May 2021

昨年、世界的なパンデミックの影響で、私の世界は縮んでしまった。ロックダウン生活をして、世界の他の地域に仕事で出かけることができなくなったことにより、突然の崩壊とスピードの変化が起こった。プロジェクトは延期されたり、中止となった。私はスタジオで多くの静かな日々を過ごした。しかし何もかもが変わってしまったようで、何も変わっていなかった。これまでもすべてが不確かだったし、そしてこれからもずっとそうなのである。唯一の確かなものは、絶え間なく続く変容の状態である。私の芸術においても、それは変容し続けるということである。

私は、”墨流し”という紙にマーブリング模様をつける昔ながらの方法で、インクを浮遊させてドローイングすることを学んだ。ドローイングの山は日に日に大きくなり、まるで沈殿物のように私の時間と存在を重ねていった。紙はA4サイズで、私の顔の大きさとほぼ同じだ。頭を下に向けて細長い筋や流れを観察すると、水面やインクの線に自分の顔が映る。そしてまた、繰り返す。全てのものと呼吸を合わせる瞬間、私はひとつであり、多くでもある。私の視界は、どこか別の場所に向かう飛行機の窓から見るように、変化する風景に向かって彷徨う。海、川、流れ、雲のフィールド、星の銀河を見て、私は再び旅に出る。

ベルリン、2021年5月28日

モニカ・グルツィマラ

Monika Grzymala (*1970 年、ドイツ、ベルリン在住) は、空間的ドローイングと建築への介入に焦点を当てた現代彫刻家、ドローイング・インスタレーション作家である。彼女のテープによるインスタレーションは、世界各地の数多くのギャラリーや美術館で展示されている。刹那的なインスタレーションのほとんどは、ある空間に限られた時間生息し、作品制作のプロセスにおける自発的な身振りや動きに根ざしている。スタジオでは、浮遊するインクのドローイング (墨流し)、紙へのスケッチ、映像、アニメーションなど、他の形式の制作に時間を費やしている。彼女はアートの制作に加えて、自然の中での長い散歩を愛している。

website : http://www.t-r-a-n-s-i-t.net
instagram : @monika.grzymala

©Monika Grzymala, Suminagashi, May 2021
©Monika Grzymala, Suminagashi, May 2021
©Monika Grzymala, Studio Berlin, May 2021

鈴木ヒラク/アーティスト。1978年生まれ。東京芸術大学大学院美術研究科修了後、シドニー、サンパウロ、ロンドン、ニューヨーク、ベルリンなどの各地で滞在制作を行う。ドローイングを核として、平面/インスタレーション/彫刻/パフォーマンス/映像など多岐に渡る制作を展開。著書に『GENGA』などがある。現在、東京芸術大学大学院美術研究科非常勤講師。